僕は今年で16歳だ。2つ年上の、それはもうずっと大人に見える彼女に恋をしている。僕の初恋だ。

夕暮れの陽が庭の土を赤く染める頃、僕はいつも彼女の影を探してしまう。呼吸が早くなるのを知りながら、目は冷静を装ってしまう。

「真剣な顔をして、何を見ているの？」

「あ、あの…君を、見てたんだ。」

彼女は笑った。笑いは柔らかく、だけどその裏に何か鋭いものがある。僕はその刃に触れてもいいのか迷った。

「ふうん。ねえ。君は私のどこが好きなの？」

「全部、って言いたいけど…声、仕草、目の奥の――」

「目の奥？ それは面白い表現ね。じゃあ、目の奥に何が見えるか、言ってごらん？」

その挑発は遊びでなく、試験のようだった。胸が締め付けられる。彼女は僕の動揺を見逃さない。

「もし私が君を試すとしたら、君はどうするの？ 正直に答えて。嘘はすぐにわかるから。」

「嘘なんて…つかない。君のことを想う時間が、僕の全てなんだ。」

「ほんとう？ それは――甘いわね。じゃあ試してあげる。私の手にそっと触れて、目を閉じてみて。」

彼女の指先は冷たくもなく、ぬくもりでもなく、触れた瞬間に世界が細くなる。鼓動が耳に鳴るのを止められない。

「目を開けて。」

「…君は――どうしてそんなに遠くにいるの？」

「遠くにいる？ 私はここにいる。だけどね、私の中にはいくつかの部屋があって、あなたはそのうちの小さな一つにしか入れないのかもしれない。」

彼女は謎を並べる詩人のようだ。僕はその言葉を糧に、扉を一つずつ叩いて開けたいと思った。でも怖さが勝つことも知っている。

「ねえ、もし私が違う人に微笑んだら、君はどうするの？」

「――それを見てしまっても、消えないんだ。君に抱いた気持ちは、例えそれを見てしまっても消えない。」

「そう。もし君がそのまま残るなら、君の誠実さを――たぶん、少しだけ、認めてあげる。」

その「認めてあげる」の言葉で、僕の世界は膨らんだ。けれど彼女の瞳にはまだ遊びが残っている。僕は気づいている。試されることは、喜びでもあり、痛みでもあると。

「わたしは自由を愛しているの。束縛は嫌い。だから試すの。誰が本物か、誰がただの影か、見分けたいだけなの。」

「君が自由なら、僕はそれを羨む。けれど君がほんの少しだけここに留まるなら、僕はその空間で呼吸する。だからどうか、」

「どうか、何？」

「どうか、嘘じゃないと言ってほしい。」

彼女はその問いを受け止めるように一瞬黙った。夕暮れはさらに紫を帯び、庭の花々はまるで全てが黒く染まった不吉な薔薇のようだった。

「――嘘じゃないかもしれない。でもね。愛は時々、説明のつかない劇場を作るの。君はその扉を叩く勇気があるかしら？」

扉――彼女はいつも扉の話をする。開けるのは簡単じゃない。でも、僕は掌にできた小さな勇気を見せたい。夜が来る前に、僕はもう一度彼女を見る。